学会紹介会長挨拶

~国際歯科研究学会日本部会(JADR)会長を拝命して~

中村 誠司

会長 中村 誠司この度、今里 聡前会長(2019年-2020年)の後任として、第34代JADR会長(2021年-2022年)を拝命いたしました九州大学大学院 歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 顎顔面腫瘍制御学分野の中村誠司です。副会長の森山啓司先生、会計理事の林 美加子先生、ならびに全ての理事の先生方のご支援とご協力をいただきながら、またIADR元会長である黒田敬之先生と安孫子宣光先生のご指導とご助言を仰ぎながら、本部会の進歩と発展のために全力で職務にあたる所存です。何卒宜しくお願い申し上げます。

また、IADR-Asia Pacific Region(APR)のDivisionの中での輪番制の順番だということで、IADR-APRのPresidentも併せて拝命いたしました。昨年から、IADR-APRではBoard Meetingを頻繁に開催して交流を深めており、Young Researchers Forum(YRF)の定期開催を始め、既に開催をした3回ともに活発な質疑応答がなされ、大変有意義なものでした。さらに、その勢いを駆って、今年からはSenior Researchers Forum(SRF)の定期開催を企画しているところです。IADR-APRの活性化はもちろんのこと、その中でのJADRのプレゼンスも存分に発揮できればと考えています。

さて、昨今は世界各地で地震、豪雨による洪水や土砂崩れ、山火事などによる大規模自然災害、そしていくつかの新興感染症のパンデミックが頻発し、「災害多発時代」とも呼ばれています。昨年は、熊本を始めとして全国的に豪雨被害があり、国外では中国の洪水が相当な被害をもたらしました。さらに、オーストラリアとカリフォルニアでは大規模な山火事が発生して悲惨な情況が報道されましたし、海外に比べると小規模ながら、先日は栃木でも発生しました。そして何よりも世界中で未曾有の被害をもたらせているがCOVID-19の世界的パンデミックです。多数の死者が出ており、その被害や影響は経済にまで及び、この先がどうなるか全く見通せない情況です。ようやくワクチン接種が世界各所で始められていますが、ワクチン接種が進み、その有効性が十分に発揮されるまでは、このコロナ禍の収束は望めないだろうと思います。コロナ禍収束後の新たな生活様式などが早々に議論されていますが、「postコロナ」や「afterコロナ」と呼ばれることが多いのですが、完全な収束には時間を要する、あるいは望めないかもしれないということから、「withコロナ」とも呼ばれています。耳慣れないかもしれませんが、個人的には「with & beyondコロナ」という表現が好きです。上手く共存をしながら、人類の英知を結集してコロナ禍を乗り越え、マスクを外して、文字通りにface to faceでコミュニケーションが図れる、安心・安全な人間らしい生活を取り戻せることを願っています。 このコロナ禍にあって、JADRがどのような活動をすべきかを考えることはとても重要です。特に、会長としてまず考えることは、学会活動の維持、願わくは活性化です。昨年は、多くの学会の学術集会が中止や延期になりましたが、完全オンライン形式、あるいはオンライン形式と集合形式のハイブリッドといった新たな学術集会の形も見えてきました。学術集会は研究発表と討議の場ではあるとともに、情報交換といった交流の場でもありますし、お祭りみたいな要素も少なからずありますので、可能な限り顔を合わすような形式にしないと、いずれは学術的な活動が減速するのではないかと危惧しています。幸いにも、昨年の第68回JADR学術集会は東京歯科大学の石原和幸大会長のご尽力によりオンライン形式で開催され、素晴らしい企画の助けもあって、大変興味ある有意義な大会となり、成功裏に終えることができました。今後も学術的な活動が減速しないよう、「with & beyondコロナ」の新しい開催方法を模索していく必要があると思います。柔軟性を持ち、しかも弾力的に対峙していけば、ピンチはチャンスにもなり得ますので、この機会に学術集会の活性化を図る事ができればと思っています。

JADRの全会員数は、昨年の年末の時点では939名で、IADRの全会員数8,314名中の11.3%、IADR-APRの全会員数2,242名中の41.9%を占めています。多くのJADRの会員が学術的に活躍されておられますが、会員数はHatton Awardの最終候補者数などにも影響しますので、プレゼンスを示す指標の一つとして重要です。昨年はコロナ禍でWashington DCで開催予定のIADR General Sessionが中止になった影響もあって、世界的に会員数が減少しましたが、JADRとしては1,000名の会員数は維持したいところです。学会としては若手にとって魅力のある活動を考え、企画・実践していこうと考えていますが、皆様方のご協力もお願いしたいところです。JADRが取り組むべきことの一つに、2027年に開催予定のIADR General Sessionを日本に誘致したいと考えており、今里 聡前会長の時にワーキング(ワーキング長:松本 卓也先生)を立ち上げ、この度、準備委員会(委員長:森山啓司先生)にステップアップいたしました。積極的な誘致活動を始めていますので、皆様方のご支援を賜れば幸いです。

一方、話を戻しますが、COVID-19の予防や治療において歯科の役割はないのでしょうか。口腔衛生状態を良くすることは何の意味もないのでしょうか。このままでは、口腔の健康は二の次と軽視され、歯科治療は感染のリスクが高いとして、国民の歯科離れが加速するかもしれません。吉村洋文大阪府知事(九州大学の卒業生なので密かに応援しています)が、ポビドンヨード含嗽がCOVID-19の予防や治療に有効であると発言し、エビデンスが不十分なために問題となりました。実は、九州大学病院では歯科治療の前に患者さんにポビドンヨード含嗽をお願いしているのですが、診療ガイドラインなどではEBMが重要視される一方で、時と場合によっては、チャレンジングな取り組みも必要ではないかと考えています。また、歯科医師がCOVID-19のPCR検査をできるのか、さらに治療前のPCR検査の保険請求ができるのかどうかで問題と混乱を生じていますが、今こそ口腔の健康の重要性をしっかりと示し、予防や治療に積極的に参画し、国民の健康維持に貢献する必要があると思います。 驚くべきことに、自分で調べることができた範囲では、歯科治療がクラスター形成に繋がったという報告はまだありません。自分には十分な説明ができない摩訶不思議の一つです。確かにCOVID-19の感染力は驚くほど高いとは思いますが、歯科医療従事者が励行している歯科治療時の標準予防策や診療制限などの対応が十分に功を奏している可能性が高いと思います。十分な予防策を講じれば感染予防が可能と思いますので、この点を十分に検討し、患者さんと歯科医療従事者の双方にとって安心・安全な歯科治療を確立できればと思います。それが、過度に萎縮をしない「with & beyondコロナ」の新たな生活様式を考えるヒントになるかもしれません。 冒頭で触れました災害の多発に加え、日本では高齢化、人口減少、虐待などの多くの社会的問題も出てきており、それらの健康との関連も注目され、「社会医学」という分野が重要視されています。この「社会医学」への歯科の参画は大きく遅れており、十分とは言えない情況です。昨今の厳しい情況の中、JADRが取り組むべき新たな課題なども見えてきたのではないかと思っています。このような社会的背景もあり、今年の第69回JADR総会・学術集会は九州大学の西村英紀先生に大会長をお引き受けいただき、大会のテーマは「Re-defining the Mission of Dental Research towards Post-corona World」といたしました。奮ってご参加いただきますよう心からお願い申し上げます。 最後になりますが、私自身は甚だ微力ではございますが、会長として本学会の進歩と発展のために粉骨砕身して精進する所存であることを申し上げます。皆様方におかれましても、ご支援をいただきますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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