学会紹介会長挨拶
~国際歯科研究学会日本部会(JADR)会長を拝命して~
(大阪大学大学院歯学研究科歯科保存学講座)
この度, 国際歯学研究学会日本部会(Japanese Division, International Association for Dental Oral, and Craniofacial Research: 略号はJADR), 第36代会長(2025 - 2026年)に就任いたしました, 大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座 林 美加子です。森山 啓司前会長(2023- 2024年,東京科学大学)の後任としてこの重責を担うこととなり,身の引き締まる思いです。副会長の江草 宏先生(東北大学),会計理事の松本 卓也先生(岡山大学)をはじめ,理事・監事および関係各位のご協力を賜りながら,本学会のさらなる発展に努めて参りたいと思いますので,どうぞ宜しくお願い申し上げます。
JADR の沿革を顧みますと,創立は1954 年11 月 6 日,高橋新次郎初代会長(東京医科歯科大学)のもとでIADR日本部会が結成されたことに遡ります。高邁かつ堅固な志を持った研究者が所属や専門分野の垣根を越えて集い,世界の歯学研究者とのネットワークを構築しながら,学会の発展に尽力してこられました。そして,1980 年には第58回 IADR 総会(河村 洋二郎大会長(大阪大学) ; 大阪ロイヤルホテル)が,また2001年には第79回IADR総会(黒田 敬之大会長(東京医科歯科大学) ; 幕張メッセ)がそれぞれ開催され,わが国の歯学研究を世界にアピールして参りました。
また, これまでにJADRからは4名のIADR会長を輩出しています。第75代会長の作田 守先生(大阪大学), 第82代会長の黒田 敬之先生(東京医科歯科大学), 第91代会長の安孫子 宜光先生(日本大学松戸歯学部), そして2024年から2025年は大阪大学 今里 聡先生が第101代会長として活躍されています。このように, IADRの100年を超える歴史のなかで, JADRは70年余にわたり常に重要な役割を果たしてきました。
一方,JADR の会員数は 2000 年に 2,122 名に達したものの, その後は減少傾向が続き,コロナ災禍の影響もあって直近の2024年は689 名にとどまっています。若手研究者の世界への登竜門であるIADR Hatton Award Competitionに, 以前はJADRから5名の候補者を送り込んでいましたが,会員数に応じて指定される推薦枠は現在 3 名に減少しています。この状況を打開すべく, 近い将来にIADR総会を日本への誘致を積極的に関係各所に働きかけており, 実現の際には会員数が倍増し, 活性化することを期待しています。会員の皆様におかれましては, 会員資格の継続ならびに若いメンバーの積極的な参加を後押しくださるよう, 何卒宜しくお願い申し上げます。
IADR に加盟する全てのDivisionとSectionは,地域別に① Africa /Middle East Region (AMER), ② Asia/Pacific Region (APR), ③ Pan European Region(PER), ④ Latin American Region(LAR), ⑤ North American Region(NAR)のいずれかに所属し,各 Region内,Region間の協働で学術研究の活性化を図る取り組みが行われています。JADRは,Australian/New Zealand Division, Chinese Division, Indian Division, Korean Division, Mongolian Section, Pakistani Section, Southeast Asian DivisionとともにAPRを構成しておりますが,現在その総会員数は1,994名を超え,5つのRegionの中で最大となっております。3年ごとに開催されるIADR・APR大会は, 2025年はIndian Division の担当で,9月19日から21日にNew Dehliにて開催されます。2025年のJADR大会は, このAPRと同時開催されますので, 多くの皆様とNew Dehliに参りたく思います。加えて,2024年からはIADR APR Mentor-Mentee programが始まり,新進気鋭の若手研究者と世界を代表するリーダーが闊達な意見を交換するオンライン・プロジェクトを今後も続けて参ります。
さらに, JADRにおける表彰制度として, 前出のIADR Hatton Award Competitionに加えて, 卒前学生を対象としたJADR Morita Student Award, 若手研究者を対象としたJADR GC Young Investigator Award,さらに2024年にはPIクラスを対象としたLotte Awardを設立して, 毎年, 優れた研究者を顕彰しています. 是非とも, ご自身あるいは若手研究者とともに, 様々な賞に挑戦していただき, JADRを大いに盛り上げていただければ, 幸いに存じます。
現在, 世界では戦争が長引き, 国内では異例の円安など, 積極的な海外活動の展開に躊躇する場面もあります。そのような状況でこそ, JADRは歯学研究者の希望の道標となるべき大きな使命を担っていると考えます。先達たちが開拓してくださった世界への道筋を次世代に繋ぐべく, 浅学非才の身ではありますが,JADR の発展に尽くして参りたいと思いますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。